経営者が給与を上げるために必要な考え方とは
会社を継続させるためにはコストを抑えることが大切ですが、給与を上げることはそれ以上に必要な施策となりつつあります。法改正や人材不足にあたり、給与を上げるために考えるべきコストの見直しや意識の変化について株式会社CREVAS GROUPの取締役である澤田さんにインタビューしてきました。
目次[非表示]
- 1.中小企業こそ、給与をあげるべき理由とは
- 1.1.人材の採用が困難に
- 1.2.離職ラッシュに備えた経営を
- 2.給与が簡単に上がらない裏側とは
- 2.1.赤字企業の割合
- 2.2.かかっているコストの相場を理解していますか?
- 3.コストの見直しなら「コストのミカタ」へ相談を!
中小企業こそ、給与をあげるべき理由とは
人材の採用が困難に
-給与を上げるべき1番大きな理由を教えてください!
理由はシンプルで、人材の採用が難しくなるからです。
経営者自身が求人媒体で求人票を出したり、管理することはあまりないので重要性に気づけていない方も多いかもしれませんが、求職者は「月給◯万円〜」「年収◯万円〜」を最初に設定して企業検索をすることがほとんどです。つまり、求職者が求めている給与の基準を満たしていないと、そもそも求職者の目に入ることがなくなりますし、例え基準を満たしていて目に入ることはあっても、検討の段階で給与が高い会社に負けてしまうということです。
今後、労働人口が減少傾向になっていき、少なくなった人材を多くの企業が取り合うという構図になっていく中で優秀な人材を採用するためには給与を上げて、検討に入る会社・選ばれる会社になる必要があります。
-それでも簡単には給与を上げない理由があるわけですよね。
シンプルに怖さはあると思います。
給与を上げるとその分保険料も上がるので、給与を5万円上げた場合実際の月の出費は5万円では済まず、見た目以上に支出が増えます。また、業績が良く資金が潤沢になったタイミングで従業員の給与を上げた場合、翌年に業績が少し悪くなったからと言って従業員の給与を簡単に下げることはできません。このように、数年後何が起こるかわからない世の中を考えると給与を上げることにハードルを感じる経営者はとても多いですね。
なので、基本給ではなく手当で所得を増やしたり、頑張りに応じてインセンティブを支給するなど、様々な手法で会社のリスクがないような形を取っています。これは経営するにあたってのリスクを抑えるために有効的な戦略ですし、違反をしているわけではないので問題はないです。しかし、本当に豊かな世の中を作るためには基本給を上げることが1番の理想的な姿だとは思います。
離職ラッシュに備えた経営を
-「給与を上げなくても採用はできるから大丈夫」と考える経営者も多そうですよね?
そう考える経営者は多いですが、2025年4月から施行される「雇用保険法等の一部を改正する法律」により、労働者が転職しやすくなり離職ラッシュが起こる可能性が高くなります。これまでは、自己都合による離職の場合、失業手当を受給できるまでに2ヶ月以上必要でしたが、2025年4月以降は雇用の安定・就職の促進に必要な職業に関する教育訓練等を自ら受けた場合には、給付制限をせず失業手当を受給することができるようになります。
つまり、これまで生活費を考えて中々離職に踏み切れなかった人たちが、失業手当をすぐに受給できるようになることで離職しやすくなるということです。これにより、離職ラッシュが起こり、新しい人材を次々に採用しないと人が足りなくなるので、「給与を高くして離職者を減らす」「給与を高くして新しい人材を採用する」ことが必要になります。
自己都合で退職した者が、雇用の安定・就職の促進に必要な職業に関する教育訓練等を自ら受けた場合には、給付制限をせず、雇用保険の基本手当を受給できるようにする
https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/001253533.pdf
引用:厚生労働省「雇用保険法等の一部を改正する法律」の成立について
-となると、人がいなくなることで会社を運営していけなくなる企業が増えそうですね...。
そうですね。一般的に「倒産」と聞くと、資金が尽きて会社を回せなくなったからと思う人が多いと思いますし、資金が理由で倒産する会社が多いことも事実です。しかし、近年は「人手不足による倒産」が建設や物流業を中心に急増しています。特に今年は、上半期(1月〜6月)だけで182件の人手不足倒産が起こっており、過去最高を大幅に更新するペースになっています。今後も毎年増えていく見通しになっていますので、給与を上げることが必須となる世の中がすぐ目の前まで来ているということになりますね。
人手不足による企業経営への影響が、一段と深刻化している。従業員の退職や採用難、人件費高騰などを原因とする「人手不足倒産」は、2024年上半期(1-6月)に182件発生。年間として、過去最多を大幅に上回るペースで推移している。
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p240703.html
引用:帝国データバンク「人手不足倒産の動向調査(2024年上半期)
-基本給25万円の会社があるとして「基本給を30万円にする」か「基本給は25万円で就業時間を短くする」だとどちらが良いのでしょうか?
後者も良いアイデアだとは思いますが、先ほどから話している通りどの会社も「人が足りていない」ので、就業時間を短くすると余計に人が足りなくなりますよね。実は企業の50%以上が「人手が足りていない」と回答していて、今も深刻な問題となっています。お金の面だけ見ると就業時間を短くした方が出費は増えないので一見良さそうですが、総合的に見るとデメリットも多いので、就業時間を短くする場合は経営の工夫が必須だと思います。
ただ、現代の労働者の中には「お金」よりも「時間」に価値を感じている人も多いため、工夫次第では求職者を集める良い施策になると思いますね。
給与が簡単に上がらない裏側とは
赤字企業の割合
-従業員目線だと「売上はあるはずのになぜ給与を上げてくれないだろう?」と感じるのですが、上げられない裏側があるのでしょうか?
1つ目の理由は「先が見えない将来への不安」です。
2020年にコロナが蔓延し、多くの企業が大ダメージを受けましたよね。コロナが出てきたことで「外的要因により業績に大きな影響が出ること」を経験しましたし、2024年問題に代表される法律の変更によって業績に影響が出ることやAI等のテクノロジーの台頭で業績に影響が出ることも経験しました。今後もコロナや法改正等により世界中に影響を及ぼす事象が起こることが考えられますし、1度上げた給与を下げることができないという日本の法律があることで給与を中々上げられないことにつながっています。
2つ目の理由は「給与を上げるための余裕がない」です。
実は、日本の普通法人のうち64.8%が赤字となっており、給与を上げたくてもお金がないから上げられないという現状になっています。64.8%と聞くと、「多くない?!」と思うかもしれませんが、これでも年々減ってきていて、2013年には71.8%の企業が赤字になっていました。
国税庁が2024年公表の「国税庁統計法人税表」によると、2022年度の赤字法人(欠損法人)は189万5,402社だった。普通法人(292万2,972社)の赤字法人率は64.8%で、年度ごとの集計に変更された2007年度以降では2021年度の65.34%を下回り、最小を更新した。
https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1198653_1527.html
参照:東京商工リサーチ「最新の「赤字法人率」、過去最小の64.8%に低下 最小は佐賀県、コロナ禍が地域や業種の明暗分ける」
かかっているコストの相場を理解していますか?
-売上以上にコストがかかっているということだと思いますが、なぜそのようなことが起こるのでしょうか?
さまざまな要因やケースはありますが、すごくシンプルにお話すると「無駄な出費が多いから」です。
例えば、広告費に年間3000万円かけている会社がいたとします。広告費は売上を上げるために必要なコストですが、「3000万円かけた結果いくら売上が立って、いくらの利益が出たんですか?」と質問されても、はっきりと答えられない経営者も多くいます。個人のお金の問題であれば、給料が25万円だとすると「家賃・光熱費が9万円で、スマホ料金が5千円で、カードが5万円で...」と細かく理解していないと生活できなくなるので、毎月の出費を管理しますよね。しかし、会社のことになると管理が雑になる経営者は一定数います。毎月会社のお金を細かく管理していないと赤字になるのは当然な気がしますよね。
また、何かを仕入れるような業種の場合、昔からお付き合いがある会社から「お付き合いがあるから」という理由で仕入れ続け、仕入れ先の見直しをしない企業も多いです。しかし、見直しをしてみるとお付き合いがあった会社から実は相場より2倍ほど高い値段で仕入れていて、その分利益率が低くなっていたということもあります。それ以外にも、社用スマホやコピー機などを1つ取っても知らず知らずのうちに相場より高いお金を払い続けていることがあります。
▼実際の仕入れコスト削減事例
▼その他採用コスト等の削減事例についてはこちら
-昔から付き合う会社を変えていないと、自分たちが相場より高い料金を払っているなんて思いもしなさそうですね。
昔から求人を出している採用媒体の営業担当に「〇〇さんは昔からお世話になっているので特別価格で出稿可能です!」と言われていたとしても、他の会社で求人を出してみると半額くらいで出せたということも珍しくありません。その採用媒体の中では特別価格なのか、それとも特別価格ですと口だけで言われていたのかはわかりませんが、安いと思っていても、相場を見ると全く安くないことはよくある話です。それは採用媒体だけに関わらず、どのサービスでも同じです。社内で使うものすべてを最安値にすることは難しいかもしれませんが、1つでも多くのものを安く抑えて支出を抑えるために、常に新しいものにアンテナを立てておくことが大事なことだと思います。
-見直しはコストを抑えるために必要なことだと思いますが、なぜしない人が多いのでしょうか?
「忙しい」や「面倒」だからという理由が多いです。
例えば、スマホは格安SIMを使ったほうが月々の料金が安くなることなんて誰もが知っていることですが、だからと言って格安SIMに全員が変更するわけではないですよね。中には格安SIMに変更することでメールアドレスを変更しないといけない場合がありますが、これまで様々なアプリやサブスク等に登録しているメールアドレスを1つ1つ変更しないといけないという手間があることで面倒だし時間がないしという理由で変更しない人も多いです。
CREVAS GROUPでは、企業規模や業種に合わせて最適なプランを組んでメンバーに社用スマホを支給していますが、私自身の個人スマホは格安スマホではなく、某S社のプランを契約し、毎月格安スマホと比べると高めの料金を払っています。変更をすれば安くなることはわかりきっていても、面倒なので変えていません(笑)
また「歯の大切さ」は子どもの頃から共通認識として誰もが知っていることですが、歯に違和感がないときに「私虫歯かな...。」と思ったり、常に歯の状態を意識している人は少ないですよね。急に歯の痛みを感じてようやく「虫歯かも...。」と意識を向けるようになり、そこから「すぐに歯医者を予約する人」と「一時的な痛みかもしれないから様子を見る人」、「忙しさや面倒さを理由に何もしない人」に分かれます。懸念があれば歯医者に行くべきなのはわかっているのに、人によって対応は様々なのです。
このように、会社で「利益が出ないな...。」と思っていても「今月は急な出費があったからしょうがない」「今だけの一時的なもの」「見直しに時間をかける暇がない」などの理由でコストの見直しをしない経営者が絶えないというわけです。
-経営者と言っても結局は人間ですし、意外とルーズな部分は多いんですね。
そうですね。どの経営者も「利益率下がっているな」とか、口座を見て「毎月ギリギリだな」とはおそらく感じていているはずです。ですが、意外とすぐにどうにかしようとする人は意外と多くありません。これは怠惰というよりも、経営者と言っても同じ人間ですので性格や特質によって左右されるものなのでしょうがない部分もあります。しかし、人を雇う会社のトップとして少しでも良い給与を払えるような工夫は必要だと思いますね。
そして、すぐに行動をしなかった結果、どうしようもなくなってから銀行にお金を借りようとしますが、すでに会社が虫歯で真っ黒になっているせいで銀行もお金を貸してくれなくなり、倒産につながるわけです。なので、もっと余裕がある段階から見直しをすることが大切ですね。企業規模が大きくなったり、新規事業により会社が変わっていくことにより「昨年までは最適化されていたものが今年は支出が増えている」ということも出てきますので、常に最新の情報を追いながらコスト最適化を図ることを意識していくべきです。歯で言うと、毎日フロスで歯間の手入れをしたり、定期的に歯医者でメンテナンスをすることと同じですね。
-今聞いている限りだと「面倒でもするべきでしょ」と思いますが、確かにスポーツをしていて「必ず効果が出る練習法」があったとしても全員が取り入れるわけではないと考えると納得できますね。
歯に限らずスポーツでもそうですし、勉強もそうですが「実施したほうが良いとわかっていても、実際にするかどうかはまた別の話」なことは多くあります。それは面倒だからなのか、時間がないからなのか、そこまで危機感を感じないからなのかは人それぞれです。経営者も同じで、会社のため、メンバーのためとはわかっていても忙しくてコストの見直しができないことも多いと思います。しかし、給与を上げるため、継続的に会社が成長していくためには必要不可欠なことですので、気づいた瞬間に何かしらのアクションを起こすことが大切ですね。
コストの見直しなら「コストのミカタ」へ相談を!
ここまで、「給与を上げるために大事なこと」について澤田さんにお話しいただきました。
給与を上げるためには「コスト最適化」が必須ですが、忙しくて後回しにしてしまうこともあると思います。「コストのミカタ」は、コスト削減に特化した専門のプロが、お客様の現状を詳しく分析し、最適なコスト削減戦略を提供します。短期的な経費削減から長期的なコスト削減まで、幅広い視点での改善が可能です。忙しい経営者様にもご利用いただきやすいサービスになっていますので、まずはサービス詳細についてご説明させていただくため、以下のカレンダーよりご都合の良い日時でご登録をよろしくお願いいたします。